TakeOver 2とOverwatch Contendersのトレンドと戦術を振り返る

雑記

先日、EUではオフライントーナメントの『TakeOver 2』、NAでは『Overwatch Contenders』のSeason Zeroオープン予選が開催されました。

この二つのトーナメントにおけるトップチームの戦術やトレンド、そしてトップ選手のプレースタイルに関する興味深い記事がOverbuffのメタリポートDotesportsに掲載されていましたが、それらの記事にいくつかの情報を加味したサマリーです。

INTERESTING HERO TRENDS
  • EU(TakeOver 2)ではダイブ>トリプルタンクという図式が明確になった。筆者(captainplanet氏)の見解ではダイブベースのチームは相手ザリアのセルフバリアを誘い出してから(bait out)本格的なエンゲージメントに入ろうとしている。バリアのない状態であれば、ディスコードとトレーサーのフォーカスでHP400のザリアは簡単に仕留めることができる。
  • ラインハルトも機動力のなさとサイズ的にトレーサーのパルスボムの餌食になりやすくダイブコンプ相手に相性の悪さを露呈している。
  • ただし、これらは主にEUでの傾向であり、NA(Overwatch Contenders)ではラインハルト、ザリア、ロードホッグといったトリプルタンクを多く運用していたSelfless, Immortals, FaZe Clanが予選で好結果を残している(FazeとIMTはそれぞれ1位通過)。今後“alpha dive team”の異名をとるRogueのダイブコンプに対してどの程度通用するのか注目される(少なくとも1チームはContenders Season OneでRogueと対戦する可能性は十分にあると思われるが11、彼らがタンクコンプを採用すればの話)。
  • EUではKR同様にゲンジの活躍が際立っている。特にKruise(eUnited), Gods(C9), Nico(Rogue), Cwoosh(Movistar Riders)がTakeOver 2では活躍していた。

コントロールタワーでのクラッチモーメント。MRDSのCwooshがOTにクアッドキルを決めCloud9に逆転勝利(試合自体はC9が勝利)。

  • ダイブメタでゲンジの活躍と対をなしているのがゲンジのパートーナーとも言えるゼニヤッタ(とディスコード)。メタデータでの使用率も60%を超えている。

  • ディスコードオーブとは別にゼニヤッタ自身のプレーとして欠かせない要素が溜め撃ちオーブ。Surefour(Cloud9)はこのチャージオーブを“Ralphing”と名付けている。12現在のオーバーウォッチにおいて、このRalphingはサポートプレイヤーにとって最高の花形プレーといえるのではないだろうか。ドラゴンブレードをシャットダウンするアナのスリープダーツも確かに見応えがあるが、Ralphはゲンジそのものを瞬時に消し去ることができる(ディスコードなしで最大230ダメージ)。
  • TakeOver 2で注目されたゼニヤッタがeUnitedのBoombox。再戦となったRogueとのグランドファイナルで相手を最も手こずらせたのが彼のゼニヤッタだった。彼のゼニヤッタがキルを取るたびにチャットにはBooooooomboxと彼の名前が連呼された(試合はRogueが3-1で優勝)。

ドラゴンブレードで仕掛けてきたNicoを返り討ちに。BoomboxのゼニヤッタはこのプレーでRogueのメンバー4人をテイクアウトしている。

  • ただし、最後に笑ったのはRogueのUnkoe。1対1のRalphingではUnkoeに軍配が上がる。この他、Lunatic-HaiのコーチはMoviestar RidersのDanteのプレーを評価している。

ディスコードのフラグ付けよりもまず先にRalphingを狙うのが彼らのスタイル。Boomboxからインスタキルを取ったのがUnkoeの溜め撃ちオーブ。

  • 最近のメタの傾向として外せないのがソンブラ。TakeOver 2でもファラマーシーが特定のマップ(オアシスガーデンではマーシーの使用率は60%以上で、主にC9が運用)で高い使用率を示すのと同様にソンブラはアヌビス防衛ではトータルで88%以上の使用率を誇っている。13
  • アヌビスはラストポイントの手前に攻防の要となるメガヘルスパックがあり、狭く窮屈なポイントの地形もEMPに適している。トランスロケーターを活用できる高台も多いためソンブラにとってはパーフェクトな状況といえる。


TakeOver 2でMisifitsはCloud9に敗れたものの、アヌビスの最終ポイントではC9のラインハルト、アナ、ファラの3人がUltをチャージアップした状態でZebbosaiのEMPが炸裂、シールドを剥がされたKaiserのハルトも為す術なくReinforceのアースシャッターを喰らっていた。尚、MisfitsはグループB最下位(1-2)で大会を去っている。


APEX S3ファーストステージ最終戦のEnVyUs対BK Starsで、nVはオフェンスでソンブラを起用している。ハリウッドのポイントAを90%以上確保すれば勝ちという状況で、奇策とも言えるソンブラとリーパーを投入。ソンブラのEMPで相手DVAのディフェンスマトリックスを封じ、瞬時に合わせたTaimouのデスブロッサムで試合を決めている

  • ソンブラはハーフDPS、ハーフサポートとも言えるユニークなロールだが、それ故に、彼女のためにDPS枠を削るのか、サポート枠を削るのかはチームや状況によって異なる。どちらが正解とは言えないが、今のところ彼女を採用するチームではソンブラを最も巧く使いこなせるプレイヤーが担当している。
  • 元々ソンブラを大会で使い出したのは今は亡きCompexity Gamingだったが、当時はアナの回復能力を軸にしたベイブレードやタンクコンプが主流であったため、ヘルスパックの重要度は今のダイブコンプほど高くはなかった。
  • ポイント攻防で使われるケースが多いソンブラだが、当時のCompexityはハイブリッドでソンブラを起用していた。TakeOver 2でもMoviestar RidersやeUnitedがアサルト以外でソンブラを起用し結果を残している。元Spicy Boys(このチームも先月解散)のspOhによると、ルート66やハリウッドといったマップではペイロードのルート沿いにアクセスしやすいメガヘルスパックがあるため、ダイバーがアグレッシブに攻めることができるのではないかと話している。
  • eUnitedは対C9戦のハリウッド襲撃でサウンドステージ(最終セクション)の扉前にまだペイロードが停止している段階で、C9に対してスポーンキャンプ(実際にはブリッジ上での待ち伏せ)を張り、その間にUnfixedのソンブラがステージ内ルート沿いのメガヘルスパックをゲンジとトレーサーのためにハックしていた。14
  • こういった戦術がKRのトップチームに対して通用するかはともかく、アグレッシブに攻めてくる”Sombra-hacking dive”に対して最も有効な戦術はディフェンス側もソンブラを出撃させることかもしれない。また、現在はUltエコノミーを意識した戦いがスタンダードになりつつあり、そういったチームのプランを狂わせることができるソンブラは今後さらに需要が高まるかもしれない。
CONTENDERS STORYLINES

先日、二日間で600以上のチームが参加したOverwatch Contenders(NA)のオープン予選が開催されました。その中でいくつかの興味深いストーリーラインが存在するチーム対決が行われたのでそれらの試合を簡単に紹介します。

Yikes! Vs Kungarna

この2チームは犬猿の仲にある。その理由はYikes!(5月に解散したDenial eSportsのロスター)のxQc(激昂しやすいタイプ15でNAのトップゴリラ)とKungarnaのBabybayとMyklとの間に存在する確執に起因している。Babybayが過去にVAC Banを受けたことを知ったxQcはOverwatchでもBabybayがチートを続けていたのではないかと疑っており、(プロコミュニティの大多数はxQcの考えに否定的ではある16)これに対してBabybayとMyklがトラッシュトークを繰り返し両チームの関係は更に悪化した。両者が対戦した因縁の試合はKungarnaが2-0で勝利したが、両チームとも予選通過を果たしているのでグループステージ以降で再び対戦する可能性もある。

CLG vs Ex-Rise Nation

NAで最も古いロスターのひとつである元Rise Nationのメンバーで固められたMidnight Sucks(アマチュア時代のロスター名はGeckoFox)は5月にRise NationがOWシーンから撤退したことでスポンサーを失い、ContendersではRenegadesに敗れ予選落ちの危機に瀕していた。一方のCounter Logic Gamingも万が一予選落ちするとロスターの存続にも関わるため負けられない一戦となった。17試合はCLGが勝利しMidnight Sucksは予選敗退によりチームの存在をアピールするための貴重なチャンスを失うことになった。今後はメンバーそれぞれが別のチームで能力を発揮することになるかもしれない。尚、CLGは予選でSeagull率いる即席チームのKelvin and the Chipmunks(Calvin, Kephrill, Ajaxの豪華メンバーが参加)と対戦し2-0で勝利している。

NRG and FNRGFE

トーナメント観戦にあまり熱心ではない視聴者はなぜ予選通過チームにNRGの名前がないのか不思議に思っているかもしれない。18理由は簡単でNRGはEnvison eSports19やFNRGFEに敗れ予選通過を果たすことができなかった。代わりに予選を通過したのがNRGを退けたこの2チームで、後者のロスターは事実上の解散状態にあるFnatic(buds)、先日解散したGale Force Esports(Muma他)、そしてNRG(enigma, clockwork)の元メンバーで構成されている(チーム名もそれらの頭文字)。FNRGFEはNAでEnVyUs, Rougeに次ぐトップチームと目されているSelfless(最近はdafran問題20の影響かややスランプ気味)を予選で破るなど予想外の活躍を見せている。予選を免除されグループステージから参加するCloud9にもNRGから放出されたGodsがいるため、予選落ちしたNRGにしてみればなんとも皮肉な結果となってしまった。NRGについてはタンクのnumlockedとサポートのdummyがチームのアキレス腱と言われている(大会では脱退したAjaxの代役としてGregoが出場)。

EG and Immortals

Overwatch Contenders NAに参加可能な地域からハブられていた意外な国が一つある。それがメキシコだ。ImmortalsとEvil GeniusesにはそれぞれNomy, Dcopというメヒコ在住のプレイヤーがいるが、彼らは大会規定により予選に参加することができなかった。Immortalsはこれに先立ってAPEX S3敗退が決まったMighty AODからFateとKariVの韓国人選手を獲得し、コーチにも韓国人を迎え入れている。Fateの際立ったウィンストンはこれまでチームには不可能だった高いレベルのダイブコンプを可能にした。渡米したばかりの韓国人選手の時差ボケと言葉の壁もあり初日でしくじり二日目に回されたものの、IMTは予選二日目をトップで通過している。

これとは対象的だったのがEGだった。彼らはDcopの代役を見つけることができず、更には大会前にIMTが行ったようなブートキャンプも実施しなかったために不測の事態に対応することができず予選で姿を消すことになった。彼らの予選落ちを決めた相手Toront Esports(ONIGODなどが所属)は直前合宿が功を奏して予選二日目を2位で通過している。尚、予選でスポット参戦ながらTorontのショットコーラーを任されたLuddeeはMendokusaii(Cloud9/登録外選手)の実弟としても知られている。

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脚注:

  1. Season Zeroのグループステージを勝ち抜いた8チームがプレーオフに出場、その後上位6チームがSeason Oneへの出場資格を得る。Season OneからRogueとEnVyUsが重役出勤。
  2. ralphが「ゲロを吐く」という意味のスラングなので、そこから来ているのかも。
  3. eUnitedがハリウッド攻撃でソンブラを出してきたのは最終セクションのみで、それまでUnfixedはソルジャーを使用。その後の防衛でもポイントAを失った後のペイロードパートからソンブラを投入し、ソンブラ向きとされるポイント攻防ではソンブラは出していない。
  4. xQcのS4最終レートは4536でS5の認定結果が4201。一方「ひーろーずねばだい」言ってるだけのマーシー専がS5認定4321だったことに苛立ち糞ゲーとキレる。
  5. 原文:...upon finding out that Babybay had been VAC banned in the past [xQc] immediately suspected Babybay was continuing to cheat in Overwatch. The majority of the pro community disagrees with xQc,
  6. 予選初日のベスト8進出以前に敗退したチームは二日目のブラケットに回され、そこでベスト7に残れないと終了。
  7. NAランク18位/Worldランク67位。元KungarnaのConnorJがスポット参戦
  8. 所属しているdafranが配信中、マッチが始まっているにも関わらず「ネコぱら」をプレーしはじめるなど、ゲーム内でトロールやスローイングなどの問題行動を繰り返しコミュニティで問題視されている。これを受けて公式フォーラムではコミュニティマネージャーが故意にランクを落とそうとする行為についてはこれまで同様に対処するとコメント。スレッドでは名前は伏せられているがNAランク1位のプレイヤーとは勿論dafranのことを指している。
  9. Season Zeroのグループステージを勝ち抜いた8チームがプレーオフに出場、その後上位6チームがSeason Oneへの出場資格を得る。Season OneからRogueとEnVyUsが重役出勤。
  10. ralphが「ゲロを吐く」という意味のスラングなので、そこから来ているのかも。
  11. eUnitedがハリウッド攻撃でソンブラを出してきたのは最終セクションのみで、それまでUnfixedはソルジャーを使用。その後の防衛でもポイントAを失った後のペイロードパートからソンブラを投入し、ソンブラ向きとされるポイント攻防ではソンブラは出していない。
  12. xQcのS4最終レートは4536でS5の認定結果が4201。一方「ひーろーずねばだい」言ってるだけのマーシー専がS5認定4321だったことに苛立ち糞ゲーとキレる。
  13. 原文:…upon finding out that Babybay had been VAC banned in the past [xQc] immediately suspected Babybay was continuing to cheat in Overwatch. The majority of the pro community disagrees with xQc,
  14. 予選初日のベスト8進出以前に敗退したチームは二日目のブラケットに回され、そこでベスト7に残れないと終了。
  15. NAランク18位/Worldランク67位。元KungarnaのConnorJがスポット参戦
  16. 所属しているdafranが配信中、マッチが始まっているにも関わらず「ネコぱら」をプレーしはじめるなど、ゲーム内でトロールやスローイングなどの問題行動を繰り返しコミュニティで問題視されている。これを受けて公式フォーラムではコミュニティマネージャーが故意にランクを落とそうとする行為についてはこれまで同様に対処するとコメント。スレッドでは名前は伏せられているがNAランク1位のプレイヤーとは勿論dafranのことを指している。
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